SECRET STORY
The Case of Amelia
SECRET STORY
The Case of Amelia
街が燃えている。
深い、深い夜の闇が、赤く、明るく飾り付けられていく。
そんな光景を、遥か高い位置から見下ろしていた。
視界の端の暗がりで、固まって動く小さな影が見える。街の外に向かっているのだろう。
近くの頭を動かして、影の周囲を焼き払う。
「……生体反応なし。制圧完了だ」
殲滅を確認したのも束の間、強い気配がこちらに向かってくる。
飛ばしていた頭を呼び戻して、戦いに備えよう。
今度こそ、この忌々しい●●どもを打ち倒すために。
………………
……
!?
アメリアは、全身の異常な痛みで目を覚ました。
なんとか腕を伸ばして端末を起動。睡眠時の自身のデータを確認する。
……塔のような巨体。複数の視界。そして、激しい憎悪。
まだ微かに残る、夢の中の感覚を思い出しながら、データをひとつひとつ見比べていく。
モニターに映る心拍、脳波、魔力の反応。様々なデータが、既知の事象と完全に一致した。
魔女の能力、【未来視】だ。
「……ハハッ……なるほど。『アメリア』が慌てて通信してくるわけだ」
クラックの代償、【記憶の欠落、心身の喪失、そして死】。そんな生ぬるいものではなかった。
クラックに蝕まれた魔女が、クラッドとなるのだ。
先程の夢が未来の可能性を示すのであれば……その結末に一番近いのが、先の戦いで最も魔力を浴びた自分なのだろう。
「……ああ。残念だよ……本当に残念だ……」
アメリアは険しい目で、睨みつけるようにモニターを見る。
自分がクラッド化してしまったら、誰がそれを記録してくれるのだ!
頭を抱え、髪を掻き毟るその姿は、普段のアメリアからは想像もできないほどに感情的だった。
……いや、他の魔女を先にクラッドに仕立て上げれば、その姿を観測できるではないか――――
バチンッ!
研究室に響いた大きな音が、アメリアの意識を正気に呼び戻した。
一部の計器が火花を散らしている。何らかの原因でショートしたようだ。
……私は今、何を考えていた?
……先ほどまで頭の中に居たのは……本当に私だったのか?
数秒前の自分が抱いた、恐ろしい考えを思い出しながら、アメリアは一人、モニターに並ぶ異常な数値を眺めていた。