SECRET STORY
The Case of Flare
SECRET STORY
The Case of Flare
街が燃えている。
深い、深い夜の闇が、赤く、明るく飾り付けられていく。
そんな光景を、遥か高い位置から見下ろしていた。
視界の端の暗がりで、固まって動く小さな影が見える。街の外に向かっているのだろう。
近くの頭を動かして、影の周囲を焼き払う。
「ふん。私から逃げようだなんて、そうはいきませんわ」
安堵したのも束の間。強い気配がこちらに向かってくる。
あれだけ痛めつけてやったのに、懲りない連中だ。
飛ばしていた頭を呼び戻して、戦いに備えよう。
今度こそ、この忌々しい●●どもを打ち倒すために。
………………
……
!?
フレアは、全身の異常な痛みで目を覚ました。
頭が重い。思考が働かない。
腕と指先の小さな痙攣が治まらず、身体がうまく動かせない。
……酷い悪夢を見ていた気がするが……思い出せない。
【記憶の欠落、心身の喪失、そして死】
クラックの代償が頭を過ぎる。
「おばあさま……!おばあさま……おばあ、さま……?」
恐怖に耐えかね、今は亡き祖母に縋ったフレアは、自らの思考に違和感を覚えた。
頭の中にジワジワと、黒いモヤが広がっていく。
——祖母の顔が、思い出せない。
【記憶の欠落】。
精神がクラックに蝕まれている。
フレアは自らに迫る、命の期限を自覚してしまった。
「……ぐっ……うぅ……っ!」
抑え込んでいた孤独が、涙が、嗚咽となってあふれてくる。
それでも、フレアに頼れる者はいない。
怖い。寂しい。戦いたくない。
たとえ泣き叫んだとしても、その声は誰にも届かない。
「ノブレス・オブリージュ」。遺されたその言葉だけが、フレアを支えていた。