SECRET STORY
The Case of Luna
SECRET STORY
The Case of Luna
街が燃えている。
深い、深い夜の闇が、赤く、明るく飾り付けられていく。
そんな光景を、遥か高い位置から見下ろしていた。
視界の端の暗がりで、固まって動く小さな影が見える。街の外に向かっているのだろう。
近くの頭を動かして、影の周囲を焼き払う。
「ふふ……キレイ…………」
夜を照らす炎に見とれていたのも束の間。強い気配がこちらに向かってくる。
あれだけ痛めつけてやったのに、懲りない連中だ。
飛ばしていた頭を呼び戻して、戦いに備えよう。
今度こそ、この忌々しい●●どもを打ち倒すために。
………………
……
目を覚ましたルーナは、夢で見た情景を思い出していた。
久しぶりに迎えた、爽やかな目覚めだ。
何をしていたかのか、はっきりと思い出せないが、とても幸せな夢だったように感じる。
自分がとても強くなったような、望めばなんでもできるような、晴れやかな気分。
そんなウキウキした気持ちも、この部屋の壁を見れば、途端に沈んでしまう。
ヴァローナの巫女が、神の声を聞くための祈祷室。
ルーナは有事の際以外では、ここから出ることを許されない。
天高くから見下ろす世界は、あんなにも広大だった。
炎に包まれた街は、あんなにも美しかった。
ここはただ狭く、ただ暗く、なにもない。
四方を結界に囲まれた、薄暗い部屋の中。
目を閉じたルーナが、小さく口ずさむ歌が響く。
「……らら、ら……ふふ……」
数日前に離れで聞いた、冬の終わりや吉事に奏でる、楽しげで、賑やかな曲だ。
ルーナは一人、赤く染まる鮮やかな世界の夢を、何度も、何度も思い出していた。