SECRET STORY
The Case of Rosette
SECRET STORY
The Case of Rosette
街が燃えている。
深い、深い夜の闇が、赤く、明るく飾り付けられていく。
そんな光景を、遥か高い位置から見下ろしていた。
視界の端の暗がりで、固まって動く小さな影が見える。街の外に向かっているのだろう。
近くの頭を動かして、影の周囲を焼き払う。
「おっと、危ねぇ。逃がしちまうところだった」
安堵したのも束の間。強い気配がこちらに向かってくる。
あれだけ痛めつけてやったのに、懲りない連中だ。
飛ばしていた頭を呼び戻して、戦いに備えよう。
今度こそ、この忌々しい●●どもを打ち倒すために。
………………
……
!?
ロゼットは、全身の異常な痛みで目を覚ました。
頭が重い。思考が働かない。
腕と指先の小さな痙攣が治まらず、身体がうまく動かせない。
……とんでもない悪夢を見ていた気がするが……思い出せない。
【記憶の欠落、心身の喪失、そして死】
クラックの代償が頭を過ぎる。
呑まれるわけにはいかない。ラガルトを守れるのは自分だけだ。
こんな力に頼っていては駄目だ!自分の力で抗わなければ!もっと、もっと強くならなくては!
「……くそっ……畜生っ……」
吐き捨てた言葉とは裏腹に、ロゼットの口角は大きく上がり、焦点の定まらない目は期待に満ちていた。
もしも、夢の続きが見られるのなら。身体に満ちるこの黒い魔力で、あの影たちと本気で戦えるなら。
ああ。それはどんなに、楽しいのだろうか。