AFTER STORY
The Case of Flare
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The Case of Flare
「ノブレス・オブリージュ」。敬愛する祖母の口癖であり、生き様であった。
フレアの先代魔女である祖母は、魔女としての力を失ってなお、貴族としての模範を貫き通し、シャヴルールの復旧に大きく貢献。数ヶ月前に息を引き取った。
祖母は歴代でも有数の実力と謳われていたが、当時は魔女が今よりも少なかった。
クラックの研究も始まったばかりであり、ヒュドラ型の侵攻を止められず、都市の占領を許してしまったのだ。
そして現代。実用化されたクラックにより、大幅に強化されたフレアたちは、ついに人類の悲願、エンクラティアの奪還に成功した。
「……おばあさま。私は……お役目を全ういたしました……」
最大の脅威は退けた。
フレアを筆頭とした貴族の統治により、人類は必ずすべてのクラッドを打破し、かつての繁栄を取り戻すのだ。
とはいえ、ヒュドラ型はまた襲ってくる。危険な力、クラックに頼ることもあるだろう。
これからは守り抜くのだ。シャヴルールという国と、人類の発展を。
——「ノブレス・オブリージュ」。
貴族としての矜持はフレアにとっての鎧であり、また、その身を縛る枷でもあった。
フレアは強くあらねばならない。これから領民を率いるにあたっても、弱気な顔は見せられない。
貴族として、そして魔女として。
唯一の指導者であり、理解者であった祖母の前だけが、フレアが一人の少女として振る舞える、無二の場所だった。
「……おばあさま……フレアは……フレアは……」
あふれる涙、震える足。そんな自分を叱ってほしいのに。
その望みはもう、叶わない。
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